東京高等裁判所 昭和25年(ネ)388号 判決
控訴代理人は原判決を取消す、被控訴人は控訴人に対し宇都宮市戸祭町千九百六番地の三宅地七十五坪三合三勺の内宅地二十坪の地上に建築してある家屋番号同町第六百二番一、木造亞鉛葺平家店舗一棟建坪十四坪を收去し、且つ右宅地の内二十坪を明渡すべし、訴訟費用は第一、二審共被控訴人の負担とする旨の判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。
当事者双方の事実上の陳述は、被控訴代理人において、本件土地は被控訴人の先代池田繁延が共有者駒場の承諾を得て使用していたものであると述べ、控訴代理人において右事実を否認すると述べた外原判決の事実摘示と同一であるからここにこれを引用する。
<立証省略>
三、理 由
宇都宮市戸祭町千九百六番の三宅地七十五坪三合三勺が控訴人の所有であり、同地上の家屋番号同町第六百二番
一、木造亞鉛葺平家店舗一棟建坪十四坪が被控訴人の所有であることは当事者間に爭がない。
よつて被控訴人主張のように、被控訴人が本件土地に対し地上権を有するかどうかについて判断する。
本件土地は、もと被控訴人先代池田繁延及び訴外駒場久七両名の共有で、右繁延はその土地上に、本件建物を所有していたところ、同人は昭和八年七月二十七日自己の共有持分権の上に抵当権を設定して訴外福田新吉から金員を借受けたこと、被控訴人は昭和十一年八月十六日先代繁延の死亡に因りその家督を相続し、同人の権利義務を承継したこと、及び債権者福田新吉は債権の弁済を受けることができなかつたので、宇都宮地方裁判所に被控訴人の右共有持分権につき競賣の申立をし、抵当権の実行をした結果昭和十八年十月二十二日控訴人において競落し、右共有持分権を取得したことは当事者間に爭がない。そして原審並びに当審証人駒場喜一の証言によると、共有者駒場久七、同人の死亡に因りその家督を相続しその権利義務を承継した。駒場喜一は被控訴人先代繁延、同人の死亡に因りその家督を相続し、その権利義務を承継した被控訴人に対し、本件建物所有のため本件土地を使用することを承諾していたことが認められる。当審証人皆川芳男の証言並びに甲第四号証の記載内容は信用することができない。
およそ土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において、その土地のみを抵当としたときは抵当権設定者は競賣の場合につき、地上権を設定したものと看做されることは民法第二百八十八條の定めるところであるが、右規定は右の場合において建物所有者が当該土地については共有権者にすぎない場合にも類推適用されるかどうか。元來土地の共有者は自己の持分権の上に全部の占有支配を伴う地上権を設定することはできないものと解すべきであるが、他の共有者の同意があれば共有地の上にかような物権を設定し得るものであることは民法第二百五十一條の規定上是認しなければならないところであるから、かような場合には土地利用の経済的目的からいえば、土地の單独所有の場合と異なるところがないものといわなければならない。したがつて、他の共有者の同意を得て共有地の上に建物を所有している共有者がその持分権につき抵当権を設定した場合にその共有者の属する持分権が抵当権の実行に因り競賣に付されこれによつて、その権利を取得した者があるときは、抵当権設定者である共有者は土地の單独所有者の場合におけると同様民法第三百八十八條の規定の趣旨により建物のため共有地につき地上権を設定したものと看做されるものと解するを相当とする。尤も右の場合において他の共有者は單に抵当権を設定した共有者のため建物を所有することに同意したに過ぎないものではあるが、建物の存在を完うさせようとする国民経済上の必要上認められた同條の立法趣旨より考えれば、右の場合は土地の單独所有者がその土地上に建物を所有している場合と区別するの理由がないものといわなければならない。それ故に前記のように他の共有者駒場久七の同意の下に共有地上に本件建物を所有し、且つ自己の共有持分権の上に抵当権を設定した被控訴人先代繁延の家督を相続し同人の権利義務を承継した被控訴人が抵当権を実行された結果、昭和十八年十月二十二日控訴人が競賣において、被控訴人の共有持分権を取得したものであるから、前説明のように被控訴人は本件土地につき法定地上権を取得したものと看做されるにいたつたものである。
しかして、控訴人は共有者駒場喜一との間に本件土地につき共有物分割の協議が調わなかつたので、宇都宮地方裁判所に競賣の申立をし、昭和二十四年七月九日控訴人自ら競落し、持分権を取得しここに本件土地につき單独の所有権者となつたことは被控訴人の認めるところであるが、本件土地が前記のように被控訴人所有の本件建物のため既に法定地上権が設定されたものである以上、被控訴人は右地上権に基ずき、本件土地上に本件建物を所有する権原を有するものであることはいうまでもない。
しからば本訴請求は認容し得ないことは明かであるから、これを棄却した原判決は正当で、本件控訴は理由がない。民事訴訟法第三百八十四條、第八十九條、第九十五條を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 中島登喜治 小堀保 薄根正男)